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トマト

トマトの栽培に農薬が必要な理由

トマトのイラスト

1990年代に日本で作られた「桃太郎」という大玉の品種が現在の主流で、そのほとんどが栽培施設で育てられています。日本は世界で最も優れた栽培技術を持っており、その技術のおかげで一年中トマトが収穫できるのです。

サラダはもちろん、パスタのソースやミネストローネなどに酸味や彩りを添えてくれるトマトは、料理になくてはならない存在です。しかし、トマトは病気や害虫に弱い野菜なので、栽培時には殺虫や殺菌、土壌殺菌殺虫剤が使用されています。

アブラムシやハダニなどの害虫にはピレスロイド系の農薬が使用されています。また疾病や灰色カビ病、葉カビ病などには有機塩素系・ジチオカーバメート系薬剤を使用しています。

トマトを襲う病害虫と対策に使われる農薬

トマトがかかる病気

トマトモザイク病

主にアブラムシが飛来して感染するウイルス性の病気です。ウイルスは数種類あり、複合して感染します。殺虫剤による防除やシルバーマルチシート、シルバーテープを貼りアブラムシの侵入を防ぐことで、感染を予防します。

トマト黄化壊疽(えそ)病

ミナミキイロアザミウマ・ネギアザミウマ・ダイズウスイロアザミウマ・ヒラズハナアザミウマなどの害虫によって感染が広がります。またキク科雑草・キク・ダリア・ガーベラなどから感染する場合もあるそうです。育苗期(苗の時点)から殺虫効果のある農薬を散布して害虫を防除し、感染を防いでいます。

トマト炭疽病

糸状菌(かび)が原因で起こる病気です。熟果や成熟期に近い果実に発生することが多いのが特徴。初めは果実の表面に水浸状小斑点を生じます。その後、中心部から黒褐色の小粒点が広がることも。被害を受けた果実は腐敗して落果します。防除薬剤の、ダコニール1000やアミスターオプティフロアブルという農薬を使うことで予防可能。

トマトうどんこ病

糸状菌(かび)に感染することで発症する病気です。「うどん粉」を振りかけたような症状が出ることが名前の由来になっています。トマトのうどんこ病は2種の病原菌があり、状態がひどくなると葉だけでなく葉柄・果柄・へたなどにも広がります。露地栽培ではなく、施設栽培で発生することが多いそうです。

病原菌は生きた植物の中でのみ生き残りますが、トマトが周年栽培されているため、感染源がなくなることはありません。防除薬剤として、ファンベル顆粒水和剤やテーク水和剤などの農薬を使用します。

トマトを襲う害虫

アブラムシ類

セミに近い仲間で、成虫や幼虫が食害を起こします。モモアカアブラムシやジャガイモヒゲナガアブラムシなどが主な種類です。体長は0.5~2ミリ程度で、体色は種類により灰色・緑色・赤色と変化に富んでいます。葉や茎、果実の汁を吸って株を弱らせると同時に、糖分を含む液体を排泄するため、排泄物に黒いカビ(すす病)が発生する原因にも。またウイルス病を媒介してしまいます。

予防薬としてベストガード水溶剤・ダントツ水溶剤・チェス顆粒水和剤・ウララDFなどの農薬が散布されます。また植え替え時にはスタークル粒剤やアルバリン粒剤、ベストガード粒剤などを使うこともあるそうです。

コナジラミ類

平たい体をしている虫で、成虫や幼虫が食害を起こします。成虫は2mm、幼虫は1~2mmと小さいため、肉眼で確認することは難しいでしょう。しかし発生すると粉を吹いたような症状が出るので、感染を確認するのは容易です。幼虫が葉の汁を吸うことで、株が弱ってしまいます。またウイルス病を媒介し、タバココナジラミによるトマト黄化葉巻病の被害が大きくなるそうです。糖分を含む液体を排泄するため、排泄物の上に黒いカビ(すす病)が発生することもあります。

防除にはスタークル顆粒水溶剤・コロマイト乳剤・モベントフロアブル・コルト顆粒水和剤などを散布します。定植時にはスタークル粒剤やベストガード粒剤などで処理し、育苗期後半はモベントフロアブルを水に溶かしてかけてあげましょう。

モグリバエ類

ハエの仲間で、幼虫が葉の中に侵入し食害を起こします。マメハモグリバエ・ナスハモグリバエ・トマトハモグリバエなどの種類がいますが、肉眼では区別できません。成虫は体長2ミリくらいのとても小さなハエです。

幼虫は体長1~2ミリの黄色のウジ虫で、白い筋の先端で確認できます。葉に潜り込んで内側から葉を食べていき、幅0.5~2ミリの白い筋ができるため「エカキムシ」とも呼ばれることも。白い筋が小葉に2~3個までなら、生育や収量に対する悪影響はありません。

防除にはトリガード液剤・ディアナSC・プレオフロアブル・プレバソンフロアブル5などを散布します。育苗期後半から定植当日には、プレバソンフロアブル5を水に溶かしてかけるのも有効です。天敵が多いため、薬剤を散布しない方が発生が少なくなることもあります。

ハダニ類

ダニやクモの仲間で成虫・幼虫が食害を起こします。ハダニにはナミハダニ(薄緑色)とカンザワハダニ(赤色)がいます。体長は0.5~1ミリでアズキのような形をしていますが、肉眼で体型を確認するのは難しいでしょう。

葉の裏に成虫・幼虫が発生し汁を吸うことで、その部分が黄色く枯れます。病害と間違われることが多いですが、葉裏に虫がいたり、脱皮殻や死がいがあったりするため、容易に区別可能です。防除にはマイトコーネフロアブルという農薬を散布します。ハダニ類は雑草にも発生するため、周囲に除草剤の散布したあとに作物に寄ってくる場合も。

農薬が気になる場合は有機栽培のトマトを選ぶべき?

農薬が気になるという方は、有機栽培されたトマトの購入を検討してみましょう。有機栽培は厚生労働省の定めた基準をクリアしている農家のみが行なえます。

登録認証機関がしっかりと検査を行なうので、品質はお墨付きです。厳しい基準をクリアした農家には販売時に「有機JASマーク」の表示が許可されます。有機栽培されたトマトを選ぶ際の目印にしてください。

有機栽培のトマトと通常のトマトの価格の違い

有機栽培で作られたトマトは、1個150円前後です。通常のトマトは80円前後で売られているため、約2倍の価格になります。

有機栽培の野菜を取り扱っているスーパーで手に入りますが、もし新鮮なものを手に入れたいのなら、インターネットで注文するという手もあります。その場合は、送料がかかる場合があると念頭に入れておきましょう。

有機栽培にも農薬が使われている?

有機栽培は天然成分の肥料や農薬なら使用許可されているものもあります。化学合成されたものがないので安心ですが、天然成分とはいえ、殺菌・殺虫効果があるのは間違いありません。

また、農薬を使用しないことで通常のトマトよりも害虫や細菌が付着している可能性も。有機栽培かどうかに関わらず、きれいに洗う必要があります。

トマトの残留農薬を取り除くには

湯むきして農薬を取り除く

トマトは病害虫に弱く、農薬をかける回数が多い野菜です。皮に残った残留農薬の心配があるため、「湯むき」をするのがおすすめ。最初に流水で30秒程こすり洗いすると表皮に残留した農薬をある程度除去できます。

次にヘタの反対に包丁で十文字の切れ目を入れて、沸騰した湯の中に15秒ぐらいつけましょう。そうすると切れ目から皮がめくれてきます。すぐに取り出し冷水に入れて冷ましたら皮をむいてください。これで水洗いでは落ちなかった農薬を取り除けます。

野菜用洗剤

食器用洗剤の中には野菜も洗える洗剤があります。洗剤の用途の欄を見ると書かれているので、一度見てみるのも良いでしょう。また、ホタテパウダーを使用した野菜専用の洗剤も売られています。どちらもアルカリ性の成分が農薬を中和することで、野菜から残留農薬を除去することができます。

使い方の注意点としては、いずれも口に入れるととてもキケンなので、洗浄後にしっかりと洗い流す必要があるので、気をつけましょう。

注目は水素水で洗浄

農薬を洗浄する新しい方法として、現在水素水が注目されています。方法はトマトを水素水に浸すと付着した農薬の多くを除去できます。水素水の還元力によって、トマトに付着した農薬が溶けだすのです。実際に実験も行われ一部の農薬を除去できたという結果もあります。

しかも水素水は口に入っても大丈夫なのため、農薬用洗剤のようにしっかりと洗い流す必要ないので楽なのが魅力。また農薬除去以外にもさまざまな方法で利用できるので、一度お試しになってはいかがでしょう。

※水素水の農薬洗浄試験で実証されているのはクロロタロニルという農薬です。