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ほうれん草

ほうれん草の栽培に農薬が必要な理由

ほうれん草のイラスト

最近は、無農薬米や減農薬米が登場していますが、稲は害虫の影響を非常に受けやすい作物なので、安定した収穫量を確保するためには農薬に頼らざるを得ません。

水田に水が張られる時期から稲を狙う病害虫が増え、発生状況が稲の生育や収穫量に大きな影響を及ぼすことが多いからです。

特に、水稲に大きな被害をもたらすいもち病は、被害が拡大すると収穫すらできなくなります。こうなると農家は収入が得られなくなりますから、病害虫の防除はぬかりなく行っておきたいのです。

ほうれん草を襲う病害虫

ほうれん草がかかる病気

ほうれん草モザイク病

アブラムシの飛来でウイルスに感染するのが主な原因です。数種類の病原ウイルスがあり、単独感染ではウイルスの種類により異なった症状が出ます。通常は複数のウイルスによる重複感染をしていることがほとんどで、育成環境によっても症状が異なるため、病原ウイルスの特定は不可能です。

症状として新葉に葉脈透過(葉脈が白っぽくなる)や葉緑のモザイク状の濃淡による斑紋がでます。さらに葉が波状のように委縮し、壊疽(えそ)を生じる場合もあるようです。アブラムシを駆除する農薬の使用や、感染した株を抜き取って広がらないようにすることで予防できます。

ほうれん草斑点細菌病

初期は葉が薄くなって見える水浸状(すいしんじょう)になり、時間が経つにつれて褐色へ変化します。症状がひどくなると葉が癒着し腐敗しますが、臭いは発生しません。露地栽培で発生することがわかっていますが、明確な原因は不明。

コサイドボルドーやZボルドーなどの農薬の使用をはじめ、連作や水はけを良くするなどで予防できます。

ほうれん草炭疽病

糸状菌というカビの一種に感染することで発生します。葉や茎に症状が出て、最初は水浸状で円形の小斑点が出現し、その後小さな黒点が発生。葉の色は褐色になり、外葉が垂れ下がってきます。

現段階では有効な防除剤がないため、育成環境を整えて予防しなければなりません。

ほうれん草立枯病

シウム菌やリゾクトニア菌が原因で発生する病気です。根の部分が腐敗してしまい、地上部分が枯れてしまいます。多湿条件の環境で発生するのが特徴です。

タチガレン液剤やリゾレックス水和剤などの農薬の散布や土壌消毒を行なうことで、改善・予防ができます。

ほうれん草を襲う害虫

アブラムシ類

アブラムシの成虫・幼虫が葉を食い荒らします。主にモモアカアブラムシという種が発生。体長は0.5~2ミリ、体色は淡緑色・赤褐色で透明感があるのが特徴です。葉から汁を吸い株が弱ります。葉裏に多く見られますが、数が多くなると葉表にも出現。汁を吸う際にウイルス病を媒介するので注意が必要です。

スタークル顆粒水溶剤やアルバリン顆粒水溶剤、アクタラ顆粒水溶剤などの農薬を散布することで駆除できます。

アザミウマ類

アザミウマの成虫・幼虫がほうれん草を食害します。ミナミキイロアザミウマやネギアザミウマなどが主に発生。ミナミキイロアザミウマの成虫の体長は1ミリほどで、体色は黄色~褐色。細長いく幼虫は体長0.5~1ミリで、黄色く細長いのが特徴です。新葉の汁を吸って傷つけることで展開した葉に傷んだり萎縮したりします。

スピノエース顆粒水和剤という農薬を撒くことで駆除をしています。

ヨトウムシ類

蛾の仲間で幼虫が食害します。ヨトウガ(ヨトウムシ)とハスモンヨトウの2種類がおり、若齢幼虫の体色は緑色。老齢幼虫の体色は緑色・褐色・黒色などさまざまで、体長4センチほど。若齢幼虫は卵が数十~数百個の塊で産まれ、葉裏で集団生活をするそうです。葉表の薄皮を残して食害し、その後薄皮部分が破れて穴が開きます。老齢幼虫は葉をひどく食い荒らし、歯をボロボロに。

若齢幼虫は数枚の葉に集中しているため、被害葉を切り取って処分します。また、アファーム乳剤やプレバソンフロアブル5、ディアナSCなどの農薬を散布して駆除しています。

シロオビノメイガ

老齢幼虫の体色はツヤのある淡緑色で、体長2センチほどです。成虫は褐色の地に白い帯(シロオビノメイガの特徴)のある体長2センチの小さな蛾。幼虫が葉表の薄皮を残すため、初めはその部分が白くなり後に破れて穴があきます。

露地栽培のほうれん草で発生することが多く、駆除にはスピノエース顆粒水和剤やディアナSCなどの農薬の散布が有効です。

農薬が気になる場合は有機栽培のほうれん草を選ぶべき?

どうしても農薬が気になるという方は、有機栽培されたほうれん草を選ぶのもひとつの手段です。

厚生労働省が制定した基準に従い、指定された登録認証機関が厳格な検査を行ないます。その検査を通過して許可さを受けた農家のみが「有機JASマーク」を使用できるのです。購入する際は、有機JASマークを目印にするとよいでしょう。

有機栽培はでは、化学合成された肥料や農薬を使わずに栽培するので、残留農薬の心配がありません。有機栽培の野菜を取り扱っているスーパーで購入できますし、インターネットでも注文可能です。

有機栽培のほうれん草と通常のほうれん草の価格の違い

有機栽培されたほうれん草は、1束(約200g)前後です。時期にもよりますが、通常のほうれん草が100円前後なので、価格差は3倍ほどになります。

インターネットで注文する場合は、送料も必要なので単価が上がってしまうのが難点です。なるべく、スーパーで購入することをおすすめします。

有機栽培にも農薬が使われている?

有機栽培は化学合成された肥料や農薬の使用禁止という規則がありますが、天然成分の肥料や農薬の使用が許可されています。

有機JASマークが付いていたとしても天然成分の農薬が使われている可能性も。安全性の高い成分だとはいえ、農薬に変わりはありません。食べる際はきれいに洗い落としましょう。

ほうれん草の残留農薬を取り除くには

水洗いで農薬を取り除く

ホウレン草は栄養豊富ですが、育成に農薬が欠かせないので残留農薬や硝酸塩が多い野菜です。まず農薬を落とすためにやってほしいことは、ボウルに水を流しながら5分ぐらい浸け、5回位ふり洗いを行なうこと。水を流し続けることで溶け出した農薬が再付着するのを防いでくれます。

お湯で煮沸消毒する

2cm位切り、沸騰した湯で30秒~1分程度ゆでます。切り口からお湯の中に農薬はもちろん、硝酸塩やダイオキシンなどの蓄積された有害物質が溶け出してきます。ゆでた後は冷水に入れて冷まし、流水につけてアクを取ってから水気を絞りましょう。

野菜用洗剤を使う

食器用の洗剤の中には野菜も洗える洗剤があり、それによりほうれん草の農薬を取り除くことができます。また、ホタテパウダーを成分とした野菜専用の洗剤もあります。両者ともに強アルカリ成分が農薬を中和し、野菜の表面に付いた農薬を溶かしてくれるのです。

使用上の注意点としては、口に入ると危険なため、洗浄後しっかりと洗剤を洗い流す必要があります。小さなお子さんがいるご家庭などは細心の注意を払って使用するようにしましょう。

水素水を使って洗浄する方法も

農薬を除去するために水素水を活用するという方法もあります。水素水の浸透力と還元力により、農作物の表面についた農薬を取り除くことができます。

野菜用洗剤とは違い、口に入れても問題ないのも嬉しいところ。小さなお子さんがいる家庭でも安心して使用することができます。

また、水素水は野菜洗浄だけでなく、洗顔や炊飯、家庭菜園などさまざまな場面で活用できます。一度試してみるのも良いかも知れませんね。

水素水の農薬除去について
詳しく知りたい方はコチラ

※水素水の農薬洗浄試験で実証されているのはクロロタロニルという農薬です。