menu
農薬は一度に大量摂取したり、慢性的に浴びたりしなければ中毒症状が現れることはありません。
私たちが手にする頃には残留農薬の量もかなり減っていますし、農薬を直接飲むということもないでしょう。普段、私たち消費者が農薬のついた農作物を口にする程度では死亡することはないですし、実際に死亡事故は起きていないのです。
農薬による事故の原因で多いのが、保管管理不良、泥酔等による誤飲誤食です。
ペットボトルなどの容器に薄めた農薬を入れ替え、台所等に置きっぱなしにしてしまい、飲み物と間違えて飲んでしまった事例が報告されています。
また、故障した噴霧器のノズルを直す際に、口に加えたなど管理不良による事故や、土壌を消毒する際に周囲を覆わずに行ったことで、農薬が揮発し、近隣住民が頭痛や目の傷みを訴える被害も報告されています。
マスク・メガネ・服装等の装備不十分、農薬の調整中や片付け時の事故もあり、農林水産省では、農薬をきちんと保管・管理することが重要だと呼びかけています。
農薬による不慮の事故を防ぐためには、「農薬や希釈液、残った散布液を飲料品の空容器に移し替えない」、「農薬の近くに飲料品の空容器を置かない」、「農薬専用の保管場所に保管する」、「医薬用外毒物、医薬用外劇物に該当する農薬は必ず専用の農薬保管庫に施錠して保管する」などを徹底することが大切です。
とはいえ、最新の発表では、2016年の農薬による死亡事故は0件で、年々事故の数は減少傾向にあります。農薬は確かに使い方を間違えると危険なものではありますが、生産者の数と事故の割合を見れば、事故はごくわずかです。
「毎年多くの人が農薬によって死亡している」といった情報がありますが、これは農薬に関する誤解のひとつです。実はその死亡件数の大部分が自殺によるものなのです。
厚生労働省では、毎年農薬による自傷および自殺者や、農薬による不慮の事故による死者や中毒者の統計をとっていますが、2014年の農薬による自殺者は254人、不慮の事故による死者は78人でした。
農薬による死亡事故のほとんどは農薬を直接飲むことによる農薬中毒が原因です。また不慮の中毒事故の大部分は、農薬の散布中や、保管管理不良、薬液運搬中の容器破損などで起こっており、農作業に関わる生産者やその家族に発生しています。
日常的にこのような状況にいなければ、農薬に対して神経質になったり、過剰に用心する必要はないでしょう。